霊能者の怖い体験談 短編実話ファイル1 〜自殺願望の女性〜
「彼女」が私のところに来たのは、私が所属していた占い館を辞め、個人で占い師をやり始めて間もない頃だった。
これは、私のホームグラウンドが大阪の北新地という場所になったキッカケでもある案件だ。
北新地のとあるクラブのママから
「知り合いの娘が困っているから相談にのってあげて欲しい」
と頼まれ、ママのお店で会う事になった。
後から分かった事だが、実は彼女は私とは会いたくなかったらしい。
というのも、彼女にはもともと長年相談にのって貰っている別の霊能者がいたそうだ。
しかし周囲の人が、彼女がその霊能者に会った後からどんどん変になっていっている事から心配になり「どうにかしないといけない」と思い、私の相談者を通じて連絡を入れて来たと言う訳である。
本来なら彼女自身が希望して依頼をお受けするのが筋だが、実はこうして周りの人間から依頼される事もめずらしい事ではない。
ただしその場合、本人が何かしらの影響を強く受けてしまっていることがほとんどである。
この時、私は独立したてで仕事を選んでいる場合ではなく贅沢を言ってられない状況でもあったので、いきなりお金をいただく[相談]と言う形ではなくまずは世間話で状況確認をする事になった。
黒い靄(もや)
彼女の話では、ある日を境に疲れているのに眠れない日々が続き、周りからみると目は虚ろで、何よりも恐ろしいのは毎日同じような時間になるとマンション11階の自室からベランダに出て『飛ばなければいけない』という衝動にかられ、手すりに手をかけてはぎりぎりで我に返るということを繰り返してきたとの事だった。
毎日のように急に自殺願望に駆られるというのだから、明らかに普通ではない。
私は何とかしたいと思うが、彼女は私よりその霊能者に頼りたいのか、そうとう心酔しているようでなかなか話が進まない。
そんな中、実は私には話をしている彼女の背後にずっと黒い靄がゆらゆらと揺れているのが視えていた。
そして不可解な事に、彼女のケータイが鳴り電話に出るために彼女が外に向かった時、なぜかその黒い靄だけがそのままその場所に残り、ゆらゆら揺れていたのだ。
それまでカウンターで話していたのだが、ママから「席が空いたから」とゆっくり出来るテーブル席に案内してくれることになり、席を移動した。
私は移動するとき(黒い靄はどうなるのか?)と思った。そのまま残るのかどうか興味があった。
ママが、彼女の鞄を移動させようとした時に注目してみると思ったとおりだった。
黒い靄も一緒に移動してきたのだ。
(この鞄に原因があるのか?)という疑念と共に、他人様の鞄を許可なく漁るわけにもいかず彼女の帰りを待った。
他に客もいなくなり、ママに頼んで鞄を別のテーブルに置いてもらい、こっそりその鞄を置いたテーブルの四隅に「粗塩」を小皿に盛って置いてもらった。
すると、黒い靄のゆらゆらという動きは止まり、小さくなっていった。
そのあたりから彼女の様子が変わり、急に過去のおかしかった状況を私に話し出した。
洗脳
時折、自らの考えの様に原因までも話す場面もあったが、おそらくその霊能者の受け売りだろう。
冷静に反論せず可能性の域で解説をしたところ、彼女の中で何かが変わった。
「霊障である可能性」と「現実的障害の可能性」を説明する事で、冷静になって状況が見えやすくなることがある。
霊を信じている人は、どこかで悪い出来事を霊のせいにしがちになることは否めない。
彼女はそんな弱さにつけこまれて、これまで「言われた事を信じる」ことしか選択肢がなかった。
これは洗脳だ。
はじめて彼女に「もしかして?」という疑問が湧いてきたのだ。
そしてそれまで一切霊能者の話をしなかった彼女から、ついに核心的な話を聞き出すことが出来た。
彼女の話では、約3カ月前にその霊能者から「お狐さんを降ろして憑けていただいた」との事だった。
そしてその時、お守りとして「ブレスレットタイプの念珠」をお受けしたというのだ。
この事から、彼女がおかしくなり始めた時期と、霊能者から「お狐さんを降ろしてもらった」という時期が一致する事が判明した。
ママから彼女に、私に相談に乗って貰うように勧めていただいたが、私は彼女に「気にせず聞きたい事だけ聞いたら良いよ」とだけ伝えた。
突き放す訳ではないが、彼女が今の状況を困った事だと認識しているのか、この状況を改善しなければいけないと思っているのかはまだ解らない。
本人の意志から「改善したい」と思わない限り、押し付けても良い結果は出ないものだ。
押し付けとは一般の人が多く間違う行動だ。それが例え正しいと思ったことでも。
同業者でも「私に任せておけば良い」と本人の意志を無視して押し付ける者がいるが、依頼者の意志を無視して決めつける様な人に相談はするものではないと強く思う。
弱った人は、この押しに惹かれてしまうのが本当に困ったもので、そこを解かっていない霊能者が、調子に乗って自分を神か何かと勘違いしだすので始末が悪い。
彼女もまた、その類の「霊能者もどき」の犠牲者だった。
黒い靄の正体
彼女が鞄からおもむろに念珠を取り出し「これって大丈夫ですか?」と心配そうに訊いてきた。
間違いなく黒い靄の主だと、体の硬直と熱とで判明した。
念珠に憑りついたものを浄めるために念珠を預かった。
それから、無事に彼女の自殺願望は消え日常は落ち着きを取り戻した。
その後はリハビリではないが、時間をかけて霊能者に植え付けられてしまった誤解を解いていった。
これが、このお話の顛末(てんまつ)だ。
念珠に憑りついていたモノは、裏切られ自死された女性だった。そういう霊は「色情霊(しきじょうれい)」という。
霊能者に相談した事がキッカケでマイナスの思考を植えつけられ、この色情霊のターゲットにされた結果、恋愛が順調だった彼女のわずかな不安につけこまれてしまったのだ。
放っておいてそのまま色情霊をつけたままだと確実に投身自殺や、事故などで命を落とし、地縛霊としてその地に縛られ新しい心霊スポットとして紹介される事になっただろう。
今回は、信用できない霊能者に頼るとこうなるという事例を紹介した。
まとめ|「霊能者に言われて気を付けるワード」3つ!
最後に「霊能者に言われて気を付けるワード」を紹介するので、これに気をつけて欲しい。
①「私に任せれば大丈夫」や「絶対」などの言葉で締めくくる者は信じない方が良い!
現実社会でも「絶対儲かる」や「失敗しない」などリスクを考えない言葉には信用性がない。
②「神や仏様を憑ける」という霊能者!
こんな言葉を口にする霊能者は、すでに霊能者自身が何かに憑かれている可能性が高い。気をつけよう。
③とにかく強制や押し付ける人には相談するな!
霊能者に限らずにこういう人にも気をつけよう。
以上の事に気をつけることで、より良いアドバイスをいただける方と出会い、チャンスをつかみ、より良い人生を歩んで下さい。
ではまたお会いしましょう。