『怪談話』 作・春名功武

〈あらすじ〉

仲の良い男女のグループがドライブに出掛けた。山頂で夜景を見るはずが、怖い話をする事に……。会話だけで綴るホラーコメディ。

〈本文〉

「運転気を付けてよ。ここ事故が多いみたいだから…」
「ああ。分かってる」
「ねぇ、あのトンネル何か薄気味悪くない?」
「気のせいだろ」
「ちょっとヤダ。花子、あんた顔色悪いよ」
「さっき、何かいた」
「マジかよ」
「花子、敏感だからな」
「このトンネル抜ければ山頂だから…」

「結構、人いるなぁ」
「カップルばっか。外、寒いし、車内にいようぜ」
「夜景見に来たのに意味ないじゃん」
「いいの、いいの。それよりさ、誰か怖い話して」
「もう~、何言い出すのよ。そういうのやめよう」
「花子、お前なんかないの」
「わたし、時々見えるだけだから……」
「清正は何かない」
「なくはないけど」
「じゃひとつ頼むは」
「え~、本当にやんの。怖いよ。やめようよ」
「雪、うるせぇぞ。ドライブに怖い話はつきものだろう」
「もう~、男子って勝手なんだから」
「はじめていいか」
「ああ」
「これは、俺が友達から聞いた話なんだけど。ある結婚を誓いあったカップルがいたんだ。そのカップルにはひとつ問題があって。彼氏の方が少々遊び人で、彼女は頭を悩ませていたんだ。そんな時にいつも彼女を支えてくれたのが、ひとりの女友達で。色々と相談に乗ってくれていたんだ。「二人を応援してるから」っていつも励ましてくれていたんだって。でもね、その女友達……」
「え、何々、怖いんだけど」
「陰で、その彼氏と体の関係にあったんだよ」
「キャ~」
「こわっ」
「酷い事するわね」
「彼女は、その女友達に問いただしたんだ。そしたらね…」
「そしたら…」
「全く悪びれる様子もなく、あの男、本当軽いわ。別れた方がいい、って言ったんだって」
「えぇ~、ホント怖い女だな」
「雪、どうしてあんたが泣くの」
「だって、だって……酷すぎるよ」
「すまん、すまん、ちょっと怖すぎたか」
「人間って、本当何考えてるか分かんねぇな」
「でも、いまだに信じられないよ。俺らも昔は…」
「キャー!何々?」
「眩しい」
「義勝、頭に刺さった矢で、電気のスイッチ押してる」
「あ!すまん。またやっちまった」
「いい加減、矢に慣れろよ」

「外、明るくなってきたよ。そろそろ帰ろう」
「え~、まだいようよ」
「私、明日デートなの。夜更かしは肌に悪いし」
「じゃ帰るか」
「あ、お願い。来る時に通ったトンネルは通らないで」
「了解」
「ゴメンネ。あそこよく人間が見えるの」

作者プロフィール

春名功武(はるないさむ)

1977年、兵庫県生まれ。2000年大阪シナリオ学校演芸放送台本科卒業。第7回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞優秀賞受賞。フジテレビ『世にも奇妙な物語』の脚本を執筆。第1回日経「星新一賞」優秀賞(JBCCホールディングス賞)受賞を経て、小説家としてデビューする。2015年からアニメ「ちびまる子ちゃん」の脚本をレギュラーとして担当し現在に至る。

【問い合わせ先】

メール:i.haruna@samba.ocn.ne.jp

小説を読もう!」にて作品掲載中。

前回のコラムはこちら↓

『新東京―ゴムの街―』 作・春名功武

2020年8月14日