『生まれ変わって一緒になろうね』 作・春名功武

〈あらすじ〉

「生まれ変わって一緒になろうね」と誓い合ったカップルが、崖の上から身を投げた。女は即死。しかし男は奇跡的に助かってしまった。果たしてこの恋の結末は…

〈本文〉

「今度生まれ変わったら、きっと一緒になろうね」
男の言葉に女は頷き、2人は崖の上から身を投げた。

2人は共に24歳で、とても愛し合ったカップルだった。女の家は都内でも1、2を争う資産家で、親が決めた相手と政略結婚をしなくてはならない事になっていた。

耐え難い現実の中で、2人に残された道はこれしかなかった。女は即死。しかし男は奇跡的に助かってしまった。

男は、家族や友人に支えられ、女の分まで精一杯生き続ける決心をした。

月日は流れ、女の死から70年が経った。94歳になった男は病院のベッドに横になっていた。もはや自分の力で呼吸すら出来ない危険な状態。病室には親戚が集まり重い空気が広がっている。

ベッドの横には、70年前1人先に逝ってしまった女の写真が飾られていた。男はその写真に視線を向ける。

私は今でも君を愛している。君が死んでからの70年間、それなりに愛する人は出来た。しかし私の心の中には常に君の存在があり、忘れた事などひと時もなかった。君はあの時の約束覚えているかい。今度こそ一緒になろうな。愛しているよ。

そして男はゆっくりと眼を閉じ、この世を去った。

男は生まれ変わり、そして20歳になった。前世では悲しくも結ばれる事が出来なかった彼女と、現世でめでたく結婚する事になったのだ。

結婚式は丘の上にある教会で行なわれた。天使が舞い降りてきそうなキラキラとした日差しが教会のステンドグラスを輝かせ、オルガンの美しい音色がその場を心地よく包んだ。

イタリア人神父の前で、男と純白のウエディングドレスを着た女が、緊張の面持ちで向かい合う。

男はゆっくりと、ウエディングドレスのヴェールをめくる。ヴェールの中から、ホッペの肉が垂れ落ち、シミ、シワだらけの女の顔が現れる。

俺はどうして、こんな70歳も年上の君に惹かれてしまうんだろう。誰に何て言われようが、君の全てが愛おしくてならない。俺は君を愛している。

男はガリガリに痩せた彼女の肩にそっと手をやり、皺くちゃの唇にキスをした。

作者プロフィール

春名功武(はるないさむ)

1977年、兵庫県生まれ。2000年大阪シナリオ学校演芸放送台本科卒業。第7回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞優秀賞受賞。フジテレビ『世にも奇妙な物語』の脚本を執筆。第1回日経「星新一賞」優秀賞(JBCCホールディングス賞)受賞を経て、小説家としてデビューする。2015年からアニメ「ちびまる子ちゃん」の脚本をレギュラーとして担当し現在に至る。

【問い合わせ先】

メール:i.haruna@samba.ocn.ne.jp

小説を読もう!」にて作品掲載中。

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