短編実話ファイル2 〜霊が歩き回る家〜 前編
今日の相談者は主婦の栄子さん。
栄子さんとの出会いは、十年前にご主人のお父さんの介護の件で、少しでも居心地の良いようにと風水鑑定が得意でもある私がお宅の鑑定をしたのがキッカケだった。
お義父さんが亡くなってしまってから、永らく連絡は無かったのだが、先日ふと栄子さんから連絡が入った。
久々のその電話は、私が思ってもいなかった驚くような内容だった。
連鎖する不幸
栄子さんの話では、実はお義父さんが亡くなった後に、次々と問題が起こるようになってしまい大変困っていたという事だった。
問題は、仕事の件やご主人の件、親類縁者とのいざこざまで起きてしまい、とうとう私に電話を入れようとしても名刺が見つからずにずっと連絡が出来なかったようだ。
ここから驚くべき話を聞くことになる。
お義父さんの死後、まずご主人の弟さんの長男が亡くなってしまう。
その後、なんと長男の納骨前にその弟さんが失踪してしまったという。
弟さんは離婚していたので、長男の納骨はされず宙に浮いたままのお骨を仕方なく栄子さんが引き取ることになった。
だが、それではまだ終わらなかった。
その後、立て続けて飼い犬が三匹亡くなってしまったのだ。
不幸とはここまで続くものなのだろうか?
不安だけが頭を支配して前に向く気力を失いかけていた。
深夜の恐怖体験
そんな混沌とした日々の生活の中、今度はご主人が頸椎の神経圧迫により倒れ、末端の麻痺で自立歩行も出来ず介護を要する状態になってしまった。
そうしたある夜、栄子さんが眠りにつこうとすると、家のどこかからカタカタと音が聞こえたという。
「何なんだ?」
と考えていると、今度は子どもが小走りで階段を上り下りするような音がしだした。
絶対におかしい、、、
この家には今、自立歩行出来ない夫と、年老いた寝たきりの母親と栄子さんだけで、他に歩ける者はいない。
女性一人にのしかかる重圧の中、孤独感と不安が余計に恐怖心を煽る。
(来ないで、、!)
と一心に祈っていると、いつしか眠りについていたのだろう、気づいた時には朝を迎えていたという。
そんな日々が何日も続き、栄子さんはこのまま何もせずにはいられない心境になり、大阪で有名な生國玉神社にお詣りに行こうと決意した。
仕事も出来ず、収入も絶たれ、途方に暮れた状況で取りあえずやれる事からと藁(わら)をもすがるつもりの決意だった。
さまよう霊の正体
神社にお詣りに行ったあと、家に介護の申請の為にケアマネジャーが来られ、書類捺印の為に印鑑を探していると、使っていない通帳や普段目にしない大事な書類の間から、私の名刺が出て来たそうだ。
無くしてはいけないと思い、普段開けない引き出しに入れたのが裏目になった結果だ。
そうしてケアマネジャーが帰るやいなや私の所に連絡をして来たのだった。
私はさっそくお宅に伺うことにした。
安堵の表情で、矢継ぎ早に今までの経過を話しだした。
伺った状況から家の中を確認すると、家の中に霊の存在を確認した。
五体の犬と、男の子だった。
悪意は感じられないが、行き場が無いようで家の中を彷徨っている様な感じだった。
三階に行くと、以前お義父さんのベッドが置かれていた部屋があった。
部屋の床の間には、五個の小さな骨壺と、少し大きな骨壺一個が並べてあった。
それは、この家で亡くなった歴代のワンちゃんの骨壺五つと、ご主人の弟さんの長男の骨壺だった。
そして、お義父さんのベッド周りには護符と盛り塩が施してあった。
玄関にも盛り塩があった事を思い出し、これを含めると家の四方に盛り塩がされていることが分かった。
全てに合点がいった。
まず、納骨しない骨壺を放置した事で家の中に霊を取り込んでしまっていた。
そして、その状態で四方に盛り塩をした事で結界を張ったのと同様になり「霊が家から出られない状況」になってしまっていた。
その結果、家の中で彷徨う時の音が聞こえたのだ。
これは脅しではなく、ただ気づいて欲しいという思いが現れたのだろう。
塩自体に浄めの作用はあるが、置く数、位置、状況を考え、護符も含めて使用しないとこうして裏目に出る事になる。
まとめ
つくづく流れというのは、悪い時には悪い事が続く。ただし良い方にひらける時は突然流れが変わるものだ。
悪い事が続く時には、あえて普段しない事をして「流れを意図的に変える」という事は必要だと思う。
さてこの話には「解決編」としての続編を後日、報告したいと思う。
ではまた。