京都市北部、叡山電車「貴船口駅」から徒歩30分。ゆるやかな道を登っていくと、日本三大縁結び神社として有名なパワースポットである貴船神社があります。
秋には11月7日〜29日の期間に「貴船もみじ灯篭」で紅葉のライトアップイベントが、冬には1月1日~2月28日の間、積雪のあった日には「雪の氣生根(きふね)」というライトアップイベントも行われ、四季折々の綺麗な景色、幻想的で美しい姿を楽しむ事が出来る大変人気の神社です。
ここ貴船神社は「絵馬」発祥の地としても有名なのですが、、実はもうひとつの発祥の地といわれているのが「丑の刻参り(うしのこくまいり)」です。
丑の刻参りとは、丑三つ時(うしみつどき)といわれる深夜の時間に神社のご神木にわら人形を五寸釘で打ちこみ相手を呪う呪術のことです。
大人気マンガ「呪術廻戦」の作中では、主人公である虎杖悠仁の同期で仲間である釘崎野薔薇のバトルスタイルがまさにこの呪術をモデルにされていると思われます。
今回は、そんな古来の呪術である丑の刻参りが今も人知れずおこなわれているといわれる貴船神社へ、その痕跡を追ってきました!
他にも「丑の刻参りの準備から完全シミュレーション」「呪術をおこなうと罪になるのか?」「実際にあったとされる体験談」
などあわせてご紹介します!
丑の刻参り|宇治の橋姫と鉄輪の伝説
「丑の刻参り」とは、丑の刻とよばれる深夜午前1時〜3時に、神社のご神木に呪いたい相手に見立てたわら人形を、五寸釘で打ちつける呪いの儀式のことです。
原型のひとつとして平家物語の中の「宇治の橋姫」という伝説があります。
それはこんなお話です。
平安時代、貴族の娘である橋姫は、夫を別の女性に奪われてしまった恨みから、夫とその女性を呪い殺すために、丑三つ時に貴船神社へ参拝し神様に願います。
「女と夫を殺したいので私を鬼にしてください」
毎夜も繰り返しお願いしていると、とうとう貴船の神様はこう告げます。
「姿を変え、宇治の川に二十一日のあいだ浸かりなさい」
橋姫は白装束に、髪は五つに結い松脂でかためて角のようにし、顔に朱、体に丹(鉛丹)を塗り、頭に三つ脚の鉄輪(鍋などを火にかける台)を逆さに乗せ、その脚にたいまつを差し、口にも両端に火をつけたたいまつをくわえ、五つの火を灯し、夜ごと大和大路を南に走り宇治川に浸かり、とうとう生きながらに鬼となります。
鬼となった橋姫は、念願叶って女と夫をとり殺しました。
室町期には後日談が加えられ、それによると橋姫は、のちに妖怪退治として名高い源頼光四天王のひとり渡辺綱によって退治され、安倍晴明によって封じられたとあります。そして橋姫は
「祀ってくれるなら京を守護する」
と言って宇治川に身を投げて龍神となったといわれています。
この話に出てくる丑の刻参りのシーンが、室町時代に能楽の謡曲「鉄輪(かなわ)」の中で演じられ、呪いの儀式として広く大衆に知られることとなりました。
丑三つ時とは何時なの?
「草木も眠る」といわれる丑三つ時とは、全てのものが寝静まるといわれる時間とのことですが、厳密には「午前2時〜2時半」を指します。
日本では江戸時代まで、数字で表す時刻のほかに干支に由来する「延喜法(えんぎほう)」という時間の表示方法がつかわれていました。
延喜法では十二支を24時間に当てはめ、子(ね)の刻をはじめとし午後11時から干支1つにつき2時間ずつとして数えます。
丑三つ時とは、干支で2つめの丑の刻(午前1時〜3時)を4等分した3番目にあたる時刻になります。
丑の刻には幽霊が出るといわれる、、、
古代中国では「陰陽五行(いんようごぎょう)」という思想があり、例えば「太陽は陽、月は陰」「表は陽、裏は陰」というように全てのものを陰と陽に分けるという考え方があります。
その思想においては「丑は陰、その次の寅は陽」となります。
午前3時、丑の刻から寅の刻に変わる境にあたる「丑寅(うしとら)」は、方角にすると「鬼門」とされることからそれに近い「丑三つ時」は最も陰の力が強い時間であり、古来より「死後の世界に通じる時間」とされています。
丑の刻には、不思議なことが起こったり、幽霊が出るといわれているので、人気のない場所へ行く時は皆さんご注意くださいね!
元々は心願成就の儀式だった
貴船神社には、貴船明神が「丑の年、丑の月、丑の日、丑の刻」に降臨した為、その時間に参拝すると願いが叶うとされていて、丑の刻参りは「うしのときまいり」と呼ばれていました。
それが陰陽五行の考え方や、鬼門との関連などからいつしか呪詛の儀式として変わっていき、江戸時代あたりで今のかたちになったとされています。
宇治川にかかる宇治橋には、橋姫神社が建てられていて縁切りのご利益がさずかれるといわれています。
もしもあなたが丑の刻参りをするとしたら?|必要な準備と道具!
あまり考えたくはありませんが、もしもあなたに呪いたいほど憎い相手がいたとして、この危険な呪術をもってして相手を呪おうと考えたとしましょう。
そうなると、まずあなたは衣装を用意しなければいけません。
白装束を着て、頭には鉄輪(もしくはハチマキ)、足には歩きづらい一本歯の高下駄を履きます。そして首から魔除けとして鏡を吊るします。
顔には白粉(おしろい)を塗り、口には赤い口紅をひけば身なりは完成です。
次にあなたは必要な道具をそろえなければいけません。以下の物をご準備ください。
①呪いたい相手の名前が書かれた紙や、髪の毛や爪。写真などを中に入れた「わら人形」
②五寸釘
③木槌
④ろうそく、マッチ
⑤櫛(くし)
⑥守り刀
五寸釘の長さは約15㎝ほどもあって大きなホームセンターなどにも置いてないかも知れませんので、Amazonで買いましょう!
鉄輪は五徳(ごとく)と呼ばれるお鍋などを火にかける時の台のことなのでAmazonで「五徳」と検索すると出てきます!脚が3本のかぶれるサイズを間違えないように選びましょう!無理せずハチマキでいいかもですね。
その他も全部Amazonで揃えられますよ!便利な時代ですね!
さあ、いよいよ決行の日です。
丑の刻参りは、わら人形の中に呪いの相手の写真や髪の毛を入れることによって魂を移す依り代として、白装束を着た自分には鬼の魂を入れることで、鬼の力を利用して相手を呪う方法です。
わら人形に相手の魂を移すために、そして自分に鬼の魂を入れためには万物が寝静まった丑の刻が最適な時間であり、相手が寝ていれば魂を抜かれてわら人形に移されるといわれています。
自分の身体に鬼を入れることになれば、下手をすると自分も鬼に利用され、最後には自分が鬼になってしまうということです。
覚悟を決めましょう。
深夜2時、暗闇の中、あなたは神社の参道に立っています。
頭のろうそくにマッチで火を灯します。懐には守り刀を忍ばせて、口に櫛をくわえたら、高下駄で足をくじかないように気をつけて歩いて御神木に向かいましょう。
ここで一番気を付けなければいけないのが「決して人に見られないようにする」ことです。見られると失敗となり全て水の泡になってしまいます!
万が一見つかったら、見た人を殺さなければいけないので、守り刀を使わない為にも決して見つかってはいけませんよ!!
さあ御神木の前に着きました。鬼門である丑寅の方角(東北)を向きましたら、後はわら人形を相手に見立てて、呪いたい場所めがけて木槌で五寸釘を打ちこむだけです!
ちなみに釘を打つ場所によって相手に与える効果がちがうともいわれています!ご参考までに!
胸=相手は死ぬ(釘が多いほど効果がある)
手=相手の浮気癖が治る
足=相手の遊び癖が治る
後はこれを7日間続けましょう!
7日目の夜、帰りの参道で黒い牛が寝そべっているのを見るでしょう。その黒牛をまたいで帰ると呪いが成就するとされています。
牛に恐れてしまうと呪いの効果が無くなってしまうので頑張りましょう!
あなたはめでたく無事に丑の刻参りをやり遂げ、憎い相手を見事に呪ってやりました!気分が晴れましたね!
これにてあなたの地獄行きは決定ですが、悪しからず。
人を呪うと罪になるの?|適用される可能性のある法律3つ!
結論からいえば、現代の刑法では科学的かつ合理的な方法でなければ、いくら殺意があっても相手を殺した証明ができないため、呪いで人を殺しても罪にはなりません。
「恨んでいた相手がたまたま死んだだけ」
という解釈になります。司法ではこれを「不能犯」と呼びます。
ただし!だからといって丑の刻参りをしても大丈夫というワケではありません!
丑の刻参りをするにあたってはいくつかの行為が法律に抵触し、捕まってしまう可能性があります!
以下の3つは、貴船神社で丑の刻参りをする場合、抵触するおそれのある法律です!
丑の刻参りは深夜に行う儀式ですが、貴船神社は午後8時に閉門しますので、それ以後に境内に入る事がまず罪になります!
②器物破損罪
神社の敷地内にある木に釘を打ちつけるのは器物損害罪に当たります!
③脅迫罪
この脅迫罪のみ、罪に問われるにはひとつの条件があります。それは「自分が相手に対して呪っていることを告げる」事です。呪うという行為そのものが、相手に恐怖感を与えることで成立する罪ですので、相手が知らなければ罪になることはありません。
バカバカしく思うかもしれませんが、実際に昭和29年には、丑の刻参りをした女性が脅迫罪で捕まっています。
皆さんは絶対にマネしない様にしましょう!
実際にわら人形が打ちつけてあった痕跡を追う!
貴船神社では現在でも新しいわら人形が次々と見つかるといわれています。
ただ、もしあったとしても神社の方がすぐに見つけて撤去されているようですので、一般の方にはわら人形自体を見るのは難しいです。
しかし、打ちつけてあった痕跡は見つかるかもしれないということで、探してみました!
はじめは、奥宮の境内や近辺を探してみましたが、見つからず。
コケなどで穴がふさがっているのか、というかそもそも穴なのか虫食いなのかの判別がつきませんでした。
残念、あきらめようと思って歩いていると帰りの参道にある立派な木の裏をふと見て、なんと見つけました!
これが、現在でも行われている呪術「丑の刻参り」の痕跡です。
この木はたまたまコケが少なかった為に見つけることが出来ましたが、写真に写っていないだけで、ここだけでもおびただしい数の五寸釘の穴がありました。
神聖な御神木に釘を打ちこんだ跡を見てなお、同じようにする方がいること、それ程まで相手に対して強い恨みをもってしまうことに何とも恐ろしい気持ちになりました。
自分にもし憎い相手がいたとしても呪術を用いてまで憎むことが出来るかというと、とてもではありませんが出来る気がしませんでした。
この取材では、そんなことを考えさせられました。
丑の刻参りにまつわる実話怪談
このお話は、怪談コレクターで有名な中山市朗氏がTVでされていたお話です。
京都に住んでいるAさんは、年末にこう持ちかけられたそうです。
「アルバイトがあるからしないか? 報酬は一晩で5万円」
金額の高さに犯罪絡みかと疑いますが、続けてこう説明されます。
「そんなことはない。場所はある神社だ。ただし、5万円もらうからそれなりの仕事だ」
当日、その神社に「夜の9時に行け」と言われ向かったところ、同じように集められた人間が40~50人いたそうです。
そこに宮司が現れると次の様に言ったそうです。
「この話を聞いて無理だと思ったら帰っていただいて結構です。そのときは(口止め料として)1万円お支払いします」
明かされたアルバイトの内容は、ご神体になっている山に訪れた人が残した、わら人形などの丑の刻参りにまつわる品々を回収するというものでした。
新年を迎える前に、それらを取り除きたいという依頼で、その説明が終わると半数ほどの人は帰ってしまいました。
「触ったりして大丈夫なんですか?」
という質問に宮司は
「それはなんとも申し上げられません。でも終わったらお祓いをしてお清めをします」
と答えたそうです。
残った人たちは2、3人のグループに分かれ、釘抜きがついたハンマーや脚立、長はしごといった装備で山に入り、作業をしました。
木に打ちつけられていたのはわら人形だけではなく、呪う相手の帽子や衣服、携帯電話、写真、髪の毛といった物まであったそうです。
更には、わら人形から釘を抜くときにはうめき声が聞こえたり、抜いた瞬間に血が飛び散ったりするという事態まで起こりました。それだけでは無く、1人の男性が緊急搬送される事態まで起こってしまったそうです。
朝までに100体近い呪いのわら人形を引き抜いたそうで、体験したAさんは5万円をもらって帰途についたものの
「もう二度とあんな仕事はしたくない」
と思ったそうです。
また、救急車で運ばれた男性については、胃の中に釘が3本入っていたそうです。
あなたなら、こんな仕事受けますか?
まとめ|呪いとは?
人形を媒体とした呪いは古墳時代からあったそうです。しかし呪いの効果について、いまだに科学的には実証されていません。
呪いの対象者が原因不明の病気になったり、事故に巻き込まれてしまうのは、誰かが自分を呪っていると認識することで「自己暗示」にかかってしまうためであって、気にしなければ何も起こらないという研究結果があります。ノーシーボ効果とよばれるものです。
ですが、不可解なのはこの説では「呪いは誰かに知られると効果を発揮しなくなる」や「本人に跳ね返ってくる」という言い伝えには一切当てはまらないということです。
呪いは基本的に失敗すると自分に返ってきてしまうものです。
「人を呪わば穴ふたつ」
相手を呪い殺すなら、自分の穴(お墓のこと)も用意しておく覚悟が必要です。
そうならないように呪術、呪詛の類には絶対に手出ししない様にしましょう。
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