1979年初め、ある都市伝説が日本中に大流行しました。
「口裂け女(くちさけおんな)」です。
下校中の子供の前に現れた口元を隠した大きなマスクをした女が「わたし、きれい?」と訊いてきて、マスクを取ると口が耳まで裂けているというあまりに有名な話です。
突然現れ、日本中の小・中学生を恐怖におとしいれた事で、当時は全国で集団下校が行われたり、警察が出動する事態になったり、テレビや新聞雑誌などでも特集が組まれ、まさに社会現象を巻き起こしていました。
夏休みが終わると共に沈静化し、わずか数ヶ月で終わったこの「口裂け女ブーム」とは一体何だったんでしょうか?
今回、その謎を紐解いていきます。
都市伝説【口裂け女】
学校から帰る途中の子供の前に、コートを羽織り口元を完全に隠すほどの大きなマスクをした若い女性が現れ、こう訊いてきた。
「わたし、きれい?」
子供は「きれい」だと答えると
「これでも?」
と言いマスクを外す。
すると、その口は耳元まで大きく裂けていた、、。
これが都市伝説「口裂け女」の概要です。
これが「きれいじゃない」と答えると包丁やハサミで刺し殺されるという話になり、子供たちに大きな恐怖を与えました。
口裂け女の正体
口裂け女の正体に関しては様々な噂があります。
①「交通事故で顔に大きな傷を負った女性が、苦労して貯金したお金で美濃加茂市内にあった病院で整形手術を受けたが失敗し、その後再手術を繰り返したが良くならず、その後池で投身自殺をした。口裂け女はその女性だ」という噂。
②「精神を病んだ女性が閉じ込められていた場所から抜け出し徘徊、口紅をめちゃくちゃに塗りたくった姿を見た人が驚いた」という噂。
③「バス転落事故現場の川から白骨化した頭蓋骨が発見され、その顔を復元したところ口が耳まで裂けており、口裂け女はその亡霊だ」という噂。
これらの噂は全国に広がり、真偽不明の目撃情報や、不審者情報なども相次ぎ、福島県や神奈川県などではパトカーを出動させるまでの騒ぎになったりと、一時は大きな社会問題となりました。
1979年6月21日には姫路市の25歳の女がいたずらで口裂け女の格好をし、包丁を持ってうろつき、銃刀法違反容疑で逮捕されたという事件も起こっています。
1979年6月29日号の週刊朝日には
「1978年12月初めに岐阜県本巣郡真正町で、農家の老婆が母屋から離れたトイレに立った際、口裂け女を見て腰を抜かした」
というような記事が掲載されました。
いったい口裂け女とは何者なのか?正体はなんなのか?
そうして全国で毎日のように騒がれたこの噂は、そのわずか2ヵ月後の8月に、なぜか急速に沈静化しました。
実はこの事により、口裂け女がなぜ生まれたのかという謎を紐解くことが出来ました。
ずばり・・・!
口裂け女の正体は「子供の作り話」でした!
これはそもそも学校などで子供たち同士での口コミで広がった噂が、夏休みに入ったことで途絶えたためとされています。
なーんだと思うかも知れませんが、よく考えてみると日本にインターネットがまだない時代で、ただの子供の作り話がここまでの社会問題を引き起こすまでになったという事実が一番恐ろしいですね!
口裂け女|色んなバリエーションがある?それぞれの弱点や対処法!
口裂け女の都市伝説は子供同士で広まった噂であり作り話ですが、実に色んなバリエーションがあって面白いですよ!
それぞれに弱点があり、対処法がありますのでご紹介します!
口裂け女①|べっこう飴が好物、苦手なものは?
身長1メートル60〜2メートル以上の大柄で、頭には赤いつば広の帽子や赤いベレー帽。赤いハイヒールを履いており、血を目立たせないために真っ赤なコートを着ているそう(真っ白い服を着ているパターンもある)。
手には鎌、大鎌、長い鋏、出刃包丁、鉈、斧、メスなどの刃物を持っている場合もあり、コートの下に隠し持っている場合もあるという。
目はキツネ、声はネコに似ているという。
弱点は男性の整髪料「ポマード」で、これは過去に整形手術を受けた時の医者がいつもポマードをつけていてその臭いが苦手だったからとされている。
対処法としては「ポマード」と3回唱えると逃げていくというものや、手のひらにポマードと書いて見せるというものや直接ポマードを投げつけるという荒技も存在する。
その他に好物である「べっこう飴」をあげると夢中になって舐めるのでその隙に逃げられるというものもある。
赤いポルシェ(セリカとも)に乗っている謎の説も。
口裂け女②|好きな色は?の質問に答えられないと、、
最初は夢に出てきて「好きな色は?」と訊かれる。次に子供が家で一人で留守番をしている時に電話がかかってきて取ると「好きな色は?」と訊かれる。その後、学校帰りに目の前に現れ「わたし、きれい?」と訊かれる。
この場合の対処法は、最後に現れるまでに色を訊かれた時に正解の色である「エメラルドグリーン」と答えるとその後は現れなくなるというもの。
答えられないとどこかへ連れ去られてしまうそう。
なぜエメラルドグリーンなのか、、?
似たようなパターンに「ヨーグルト食べる?」と訊かれ「食べない」と答えると、自分が口裂け女に食べられるというのもある。
なぜヨーグルトなのか、、
口裂け女③|100m6秒で走る口裂け女!?
その他のバリエーションとしては、100メートルを6秒で走ることが出来るという、もはや口が裂けていることなどどうでも良いような化け物バージョンも存在する。
驚異的なスピードで名古屋から高速道路を九州地方に南下して行き、最後には福岡で捕まり油山の山頂にある透明な檻に入れられるという非業の運命をたどる口裂け女。
対処法は必要なく、走らせておけば勝手に福岡で警察に捕まります。
その他のバリエーション
口裂け女の噂にはこれ以外にも様々なものがあります。
★道を歩いている肩を急に叩かれる。そのままうかつに振り向くと切りつけられる。右肩を叩かれたら左、左肩を叩かれたら右から振り向くと攻撃を避けることが出来る。
★地名に「三」のつく場所に多く現れる。
★実は口裂け女は三姉妹で全員口が裂けている。
★愛媛県・徳島県では口割れ女という。このバージョンは地元新聞社が口裂け女を誤って「口割れ女」と表記したためだと噂される。
★犬が苦手。
★にんにくが苦手。
こうした噂は子供たちの自由な発想から生まれたものですが、すごいですよね!
口裂け女が流行した1979年の銀座では、ホステスたちの間で、口を手で覆って「わたし、きれい?」と客に聞くことが流行ったそうです。
客は「べっこう飴」や「ポマード」と答えることになっていたそうです。
なんと韓国バージョンも!
さらになんと2004年には韓国でも大流行しました。
韓国版の口裂け女の話は
「まだ朝鮮半島が日本統治下の頃、雪の夜にマスクをした3人の女性が家を訪ね「誰が一番きれい?」と聞いてきた。1人を選ぶと他の2人に殺され、マスクを外すと3人とも口が裂けていた。」
というもので、この話は2001年に採集されました。
韓国では口裂け女をモチーフにした映画まで登場するまでブームとなり、そして今また新型コロナ騒動でマスク姿が日常になったということから再び脚光をあびているようです。
口裂け女|その噂の発祥とは?
さて、口裂け女の噂はどこが発祥なのでしょうか?
実は「岐阜県」が発祥という説が濃厚だそうです。
1978年12月、岐阜県の八百津町という町で噂が発祥したといわれています。
翌月の1979年1月には地元の地方新聞で紹介され、6月には週刊朝日の記事で「岐阜県本巣郡真正町で農家のおばあさんが離れのトイレに行った際、庭のすみに口が耳まで裂けた女が立っているのを見て腰を抜かした」と紹介された事で、これが子供たちの間で広がり学校や塾を通して全国に広まったと考えられています。
その過程で「赤いコートを着ている」や「ポマードの臭いが嫌い」など話に尾ひれが付いていったと思われます。
他にも岐阜を発祥とする根拠として、岐阜県のある母親が、帰りの遅い娘をおどかして早く帰らせるために「口裂け女」の話を創作したものが広まったという話や、当時の岐阜県は繊維産業の中心であったため全国から人が出稼ぎに来ていたので、彼らが帰省するときに噂話も持ち帰り、全国に広まったという話もあるようです。
アメリカの陰謀説
他に口裂け女の噂は、実は「アメリカの陰謀」だったという説もあるようです。
1970年代の終わり頃、自衛隊が口コミの伝播傾向を探る実験を行なっていたという噂がありました。
そしてその実験には在日米軍とCIAも参加しており、その情報として利用したのが「口裂け女」だったというのです。
これは青森から偽の情報を流し、鹿児島までの到達時間を計測するのが主な目的だったと言われており、岐阜発祥説とは一線を画すものになってしまいますが、在日米軍やCIAが噂の広まるスピードを実証試験するために人為的に作った都市伝説であるという説もあります。
ただ、これらも真相は解らず、単なる「噂」なのです。
口裂け女は江戸時代からすでにいた!?
なんと、口裂け女は江戸時代から存在していたという事を示しているとされる文献が残っているそうです。
江戸時代の怪談集『怪談老の杖』にこんなお話があります。
「大窪百人町(現在の新宿区百人町あたり)で、雨の中を傘をさして歩いていた権助という青年が、ずぶ濡れの女とすれ違う。自分の傘に入るように声をかけたが、振り返った女の口は耳まで裂けており、腰を抜かした権助は、老人のように歯が抜け落ち言葉も話せなくなり、そのまま死んでしまった」
これはキツネが化けたものというお話でした。
他にも江戸時代の書物『絵本小夜時雨』にはこのような一文があります。
「遊郭の客が戯れに引き止めた太夫(だゆう:遊女の最上位)の口が、耳まで裂けていた」
吉原の遊郭に遊びに行った客が、廊下を歩いていた太夫を戯れに声をかけたところ、振り向いた太夫の顔が口が耳まで裂けていた。
客はそのまま気を失い、その遊郭へ行くことは二度となかったという話でした。
どちらも「振り向くと女の口が耳まで裂けていた」といった現代の口裂け女と酷似した話ですね。
もしかしてこの時代にも、口裂け女は日本中で噂されていたんでしょうか、、?
まとめ|口裂け女という現象
あるオカルト研究家の調べによると、「口裂け女」の噂がメディアで取り上げられた最も古い記録では
「裂けた口のメイクをして人を脅かす女性が出没するから気をつけるように」
というものであったとされています。
つまり、この段階ではまだ「口裂け女」はただの人間だったことが分かります。
それから人の噂にどんどん尾ひれが付いていった結果、最後には日本中を巻き込む社会問題にまで発展したというこの現象が「口裂け女」の正体でした。
ことわざには「人の噂は倍になる」とありますが、ちょっと大きくなりすぎてしまったケースのようですね。
でも、あっという間に落ち着き忘れ去られるあたり「人の噂も七十五日」とはよく言ったものです。。
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